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Blindfold
第27章 掛け持ち
久々の自宅。
全然物がない殺風景な部屋の中で、私は自分の書いたメモを見つめた。
そして、ふぅと息をつくと、スマホを取り出して店長とのLINE画面を開いた。
親戚のおばさんの体調が良くない、だから、私は母親にお願いされて、しばらく面倒を見ることになった。それに伴ってバイトの日数を減らしたくて……
完璧にシナリオを頭に入れた私は店長に通話を掛ける。
本当は今も元気にしているんだろうおばさんを、こんな風に使うのはちょっと憚れるけど、まぁ仕方ない。
電話を選んだのも、顔を合わせたら絶対にバレると思ったから、だ。
通知の音が途切れて、カチャカチャと向こうの音が響くと、急に緊張して、少しだけ手が震えた。
「ん……どうした?」
「……あ、も、もしもし」
早速声が裏返ってて本当に呆れる。
こんなんじゃ先行きが不安だ。
「なんかあったのか……?」
「いや、あの、実は……」
出来るだけ冷静に、淡々とメモを見ながら話を進める。
その間、店長は、あぁとかうんとか、差し障りない相槌を返していた。
「だから…申し訳ないんですけど…少しバイトの日数を減らしたくて」
「あぁ、分かった」
「……あの、出来るだけ忙しい曜日は出るようにするんで」
「いや、別に無理しなくても大丈夫だ、何とかなる」
「ありがとうございます」
「とにかく、無理してお前自身が体調崩したりしないように気を付けろよ」
優しい言葉に罪悪感がじわじわと私の胸を抉る。