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Blindfold
第27章 掛け持ち
「まぁ実家手伝ってぶっ倒れた俺に言われたかねぇだろうけど」
フッと自嘲気味に笑う店長に、私は微笑む。
そういえばそんなこともあった。
あれは付き合う前の、話だ。
懐かしくて、少し切なくて、苦しい、そんななんとも言えない思い出だ。
「桜」
「はい」
「辛くなったら言えよ。出来ることがあれば何でもするから」
「…………はい」
やっぱり優しすぎて胸が痛い。
それに、なるべく会わないようにしなきゃと思っていたくせに、すでに私の方が店長に会いたくなってしまっている。
しばらく沈黙が流れたあと、店長の方が「じゃあ」と声掛けた。
電話越し。
意識すればするほどいつもみたいに耳元で囁かれているような気になって、体が疼く。
会いたい、触れたい、キスしたい。
そんな事を思いながら、「では」と返事をして私は電話を切った。
「はぁぁーーっ」
深くため息をついてベッドの上に仰向けに寝転がる。
とりあえずは上手くいった、けど……
「私の方が…我慢出来る、かな……」
ぽつりと呟きながら、私は枕をぎゅっと強く抱きしめた。