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Blindfold
第28章 疑惑
悲しそうな、切なそうな、そんな店長の表情が思い出されて、胸が苦しくなる。
「こんなことして……流石に愛想尽かされる気がしてならない」
「そんなぁ……」
ここまでしてやる意味があったのか、最早疑問が湧いて来た。
喜ばせたかったのに、むしろ悲しませるようなことして……
「出来ないことはするんじゃなかった……」
流石に落ち込んでいると、葵が私の背中に触れた。
「そんな…弱気にならないでください!」
「でも……」
「何か聞かれたら私が適当に言っておきますから!! 大丈夫です!!桜さんと店長は甘々な誕生日を過ごせるはず!!!」
謎に元気な葵を見つめて私はギュッて拳を握った。
「あんな男に台無しになんかさせませんよ!」
確かに、悠に台無しにされたなんてことになったら、本当にムカつく。
何度も言うけど、あと1週間の辛抱、だ。
「がんば…る」
「そうです!! 頑張りましょう!!!」
若干葵の底無しの明るさに少し励まされながら、私は再びメイクを再開して「radice」出勤の準備をしていた。