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Blindfold
第29章 スミレ



お店が開く前、幸さんに事の顛末を話すと、少し困った顔をして腕組んでいた。


それに少しビクビクしながら、改めて私は小さく息を吐く。




「うーん……そうねぇ…」



「すみません……」



「あら、桜ちゃんが謝ることじゃないのよ? でも、残念だけど万が一のことを考えて、ここで働いてもらうのは今日で終わりにしましょう」



突然の幸さんの提案に、私は思わず「えっ…」と声を上げた。




「で、でもあと1週間……」



「うん、でもこうなったら潔く引いた方がいいわ。その悠?って男、粘着質みたいだから、桜ちゃんから引き離しておきたいし…。それに桜ちゃんすごくお店に貢献してくれたから、当初見込んでた分くらいのお給料は渡せそうよ」



パチリとウインクされて、私は言葉に詰まった。


2週間で、3週間分のお金をもらえるのは嬉しい。


それでもう店長のプレゼント代は十分だけど、割と気に入っていたバイトだから、突然の辞めるのは少し寂しく感じた。




「随分、悲しそうにしてくれているけど、ここでの仕事、結構気に入ってくれてた?」




幸さんの問いに素直に頷くと、幸さんは少し首を傾げながら上品ににっこりと笑った。




「嬉しいわぁ。ありがとう。確かに桜ちゃん素質もあるし、達也の彼女じゃなかったら強引に引き止めるんだけどね」



「本当に……お世話になりました」



「いいのいいの。さ、そろそろ店開くわ。スミレ、有終の美を飾るのよ!」




幸さんに言われた通り、私はいつも以上に自分に気合を入れて、「radice」最後の勤務をスタートさせた。





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