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Blindfold
第29章 スミレ
開店して少しして、当然とばかりに悠が来客した。
「スミレ……? そんな睨まないでよ、ゾクゾクする」
「気持ち悪い…」
悠相手に、愛想笑いをする気にもならず、私はそのまま無表情でお酒を作った。
「私もう今日でここやめるから」
「えっ…? そうなの? 残念だなぁ」
「あんたのせいなんだけど」
キッと睨むと、悠はニヤリと笑いながら私が差し出したお酒を受け取る。
「なんで? あいつにバレたの?」
楽しんでる。
それがさらにムカついて視線を逸らした。
「多分バレてはないけど、変な誤解されてる」
「へぇ。でもそれで、いつもと違うあいつが見れていいんじゃないの?」
「はぁ?」
「それで……? 昨日は抱き潰された?」
ほんとにムカつく男だ。
泊まるはずだったのに、こいつのせいでそれも無くなったことを思い出すけれど、それで感情をむき出しにするのはもっと腹が立つ。
「………その様子だとそんなことなさそうだね」
「………………」
「体疼いてるんじゃない? 俺ならいつでも空いてるけど」
そう言いながら、体を近付けて手を伸ばしてくる悠を払い除けようとしたところで、悠の背後からもう一方の手が伸びて、悠の手をパシッと掴んだ。