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Blindfold
第5章 ナンパの男
私は『桜』で
彼は『悠』で
それは仮の姿でも何でもなくて──────
私は、彼に何かを
期待していた……?
「ごめんね」
「………そっちが誘ったんじゃん」
「うん。俺のナンパミス」
「最低」
「俺、そういう人間だから」
イライラした。
彼の物言いも
その態度も
腹が立った。
けれど、
何より
彼に言われた事を何一つ否定出来ないことに
一番憤りを感じた。
「っ………帰る」
ベッドから立ち上がって、荷物を持った。
「俺が言うのも変だけど」
彼がなんか言っているのをお構いなしで、扉のノブを捻る。
「自分、大事にしなね」
「っ…………」
本当にこの人に言われる筋合いはない。
「さよなら」
語気を強めてそう言い残した私はそのままラブホテルをあとにした。