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Blindfold
第6章 迷子
全てを話し終わった時、店長は2本目のタバコの火をもみ消した。
「お前…よくそんなこと、誰にも言わないで抱えてたな」
「………言えないですよ」
私には、本物の関係の人なんていない。
いつも相談事はお姉ちゃんにしていたけど、こんなことお姉ちゃんに話せない。
第一、今、お姉ちゃんは返事をしないどころか、相槌を打つことすらしないのだから。
「辛そうだとは思ってたけど、そこまでとは思わなかったわ」
顔を歪ませた店長を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「私、もう自分が……誰なのか……」
昨日鏡に映った自分は…
「私はもう………私じゃないんです」
『桜』はどっかに行ってしまった。
昔、どんな風に振舞っていたのか、どんな日々を送っていたのか、どんな風に息をしていたかすら、思い出せない。