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◇なななの短編◇
第9章 大雪につき(Blindfold)
「おはようござ──」
挨拶して入ろうとしたら、すぐ前に大きな背中が目に入った。
スマホを耳に当てた彼は、扉の鈴か、私の声かどちらかに反応して勢いよく振り返る。
その目がカっと開いていて、あまりの迫力?というか覇気に言葉が止まってしまった。
「桜!!!!」
「は、はい」
突然怒鳴られて、身がすくむ。
なんで、急に怒られているんだろうか…。
昨日の片付けで何かやり残してたとか?
でも、店長はそんなことで私を怒らない。
というか、彼は一見すると気性が荒そうだし、口が悪いから誤解されやすいけれど、滅多なことではこんな声を荒げて怒ったりしない。
「何回電話したと思ってんだよ!!」
「え……」
スマホを下ろした店長は、はぁ〜〜っと大袈裟に溜め息を付く。
それを見て、私は先ほどポケットに入れたスマホを取り出した。