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◇なななの短編◇
第14章 ホワイトデースペシャル(bloʇbnilᙠ)
「お前さ、何か食べたいものあるか」
「え……?」
「まぁ、別に欲しいもの、でもいいけど」
カウンターの椅子に逆向きに腰掛けて桜の様子を見る。
何でそんなこと聞くの?って顔で軽く首を傾げているのを見て、俺は首の後ろに片手を当てた。
「……お前の“義理チョコ”のお返ししなきゃなんねぇだろ」
「……あぁ……」
そう言って、桜はスマホを開く。
きっと日付を見ているんだろう。
忘れてたのか……。まぁそんなもんかもしれない。俺もバレンタインは客からもらうまで忘れてたし。
「まだ、用意してないんですか」
「るせぇ。大体お前早く来すぎなんだよ」
ムスッとしながら、すみませんと桜が呟く。
そして、俺の方に近付いてきて、あの…と声を掛けてきた。
「なんだ」
「……そのこと、相談してたんですか?」
「は……?」
「いや…だから……幸さんに…」
そう言いながら、桜はギュッとカバンの紐を握った。