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◇なななの短編◇
第6章 バレンタイン(近くて遠い)
────────…

渡されたチョコレートを見つめながら、光瑠は眉間シワを寄せた。


「話が違うっ!」


どこにも望んでいた文字がない。


まぁもらったこと自体が嬉しいのだが…。


「そんな小さいなかに書けるわけないじゃないですかっ…」


なら、さっきのはなんだったのか──


少し不満に思いながら、光瑠がチョコレートを眺めていると、真希が寄ってきてギュッと腕を掴んだままうつ向いた。


「………あの…っ…文字は書けませんでしたけど…」


「…………」



「……言葉ならっ…」



「は?」



訳が分からずにいると、真希はプルプルしながら顔を上げた。


「っ…ひか…るさんっ…愛してます…っ」


「っ……」


「……何か言ってくだ──んんっ…」


「…っ…………調子に乗るなと言ったはずだっ…」


「ひかるさっ…チョコレートっ…食べないんですか…あっ…」


「先にお前だ。
それに…」


写真を…
撮ってから…食べる…


とは絶対に言わない光瑠であった。


【完】
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