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王子と専属メイドの戯れ
第8章 宿題
「里音さん、ご苦労様でした。召し上がりなさい」



声をかけて頂いたのはメイドの総取締役のばあや様。


光騎さまの育ての親と言っても過言ではない、わたしの尊敬する人の1人です!



何も知らないわたしに、様々な作法を教えていただきました。



「ばあや様!ありがとうございます!いただきます」



東大寺家の料理は本当に素晴らしいものばかりで、いつも楽しみなのです。




「新しい学年はどうでしたか?」


ばあや様は凛とした声でそう聞いてきます。

口は動かしても、手はせわしなく働いているのが素敵です。



「それが…クラスメートが3人も欠席だったので、みなさんにはお会い出来なかったのです…」


「あらあら…では今日は3人だけ?」



「はい。でも、とても優しい方がいらっしゃって、わたしに親切にして下さったんです!」



「まぁ、それは良かったですね」



ばあや様はニッコリ微笑んでそうおっしゃいました。




ふと、西園寺さんの事が頭によぎりました。


ばあや様なら、西園寺家と東大寺家の因縁を、知っているかもしれない…








ですが、それは口に出すことは憚られました。


だって、メイドはご主人への忠誠が第一で、余計な詮索はご法度なのだと、ばあや様が教えてくれていましたから。



わたしはすぐにその想いを打ち消しました。



「早速宿題をたくさん出されてしまいました。2年生は大変なのですね」



わたしは何の気なしにそう言いましたが、その言葉にばあや様の仕事の手が止まりました。



様子が変わったことに気づき視線を送ると、ばあや様は真っ直ぐわたしを見て、こうおっしゃいました。


「あなたは、メイドの仕事など、やる必要はないというのに」



わたしはしまった、と思いました。


わたしはこの1年、何度もばあや様にこう言われていたのです。



わたしは慌てて否定しました。



「ばあや様。わたしはメイド業好きです!光騎さまに仕えれて幸せです!ばあや様が教えて頂いた事を、もっと…していたいのです」




東大寺家への恩返しにはまだまだ遠いけど、なにかやらなきゃ気がすみません。
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