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余熱
第10章 深まる

先生の車に乗っている間、わたしはずっと窓の外を眺めていた。

――祐がいるのに。

そんな後ろめたさが、この大通りを進むにつれ、どんどん遠ざかっていく。

深まる夜の闇に消えていく。

その様子を眺めていたのかもしれない。


先生のマンションに着いたが、先生に以前のような性急さはなかった。

ふわり、と導かれるように、寝室へと到着した。

そして、ゆっくりとベッドに寝かせられたかと思うと、先生のキスが降ってきた。

それは、以前のような強引さは微塵も感じられず、甘くて優しくて、

そして今までで一番濃密なキスだった。

先生の手が腰に触れた瞬間、わたしは先生の舌と唾液と唇から何とか逃れ、

「…あの、お風呂お借りしても…」

そう願い出たが、

「…だめ。

俺のシャンプーとか使ったら、葉月の匂い消えちゃう。」

先生はそう言うと、わたしの鎖骨あたりに鼻先を埋める。

「お、お願いします…っ!

今日たくさん汗かいちゃったので…っ」

そう言いながら、わたしは服を脱がしていく先生の手を抑える。

「今からまた汗かくんだからいいよ、気にしなくて。」

「気になるんです!

ほ、ほんとに…っ!お願いします!」

先生の手首をぎゅっと掴む。

「…じゃあ、シャワーで汗流してくるだけならいいよ。

シャンプーとかボディソープとか、使っちゃだめ。」

「はい…分かりました。ありがとうございます。」

そうして何とか解放され、髪と体を洗ってから、先生のもとへ戻った。
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