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余熱
第10章 深まる

浴室から寝室へ戻ると、部屋の電気は消され、枕元にあるスタンドが杏色の仄かな明かりを灯していた。

そしてそれは、ベッドに仰向けに横たわる先生を、ぼんやりと照らしていた。

「先生はお風呂、いいんですか?」

そう尋ねると、先生は体を起こしてこう言った。

「…臭いから入ってきてほしいって言うなら、そうするけど。」

「そ、そんな…!全然、臭くなんかないです…!」

わたしが慌てて否定すると、先生はわたしの手をぐっと自らの方へと引き寄せた。

ぐらり、と体勢が崩れ、あろうことか、先生に跨るような格好になってしまい、かあっと頬に熱が集まる。


「…じゃあ、いい匂い?」


そして、先生のその囁きと、再び腰を這う手とが、わたしに追い打ちをかけた。

何も言えなくなっているわたしを見て、先生はふっ、とわたしの耳元で笑う。

電話の時とは比べ物にならないくらい、くすぐったい。ぞくぞくする。

たったそれだけで、吐息に声が交じってしまう。

そしてまた、恥ずかしくて、熱くなって…


「…それに、早く葉月のこと抱きたくて仕方ないから、お風呂は入らない。」


そんなわたしに先生はまた甘い言葉をかけ、わたしの首筋から胸元へと唇を滑らせた。

そのゆらゆらとうねりながら流れるような動きに、わたしの体も揺らめいていく。

「葉月…」

その恋人を呼ぶような囁きに、わたしの心も揺らめいていく。
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