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余熱
第1章 崩れる
さらに気付いてしまったことがある。
昨日のあの瞬間に、荒波によって一瞬で崩されたお城ーー。
あれはきっと、何でも言い合える、気を遣わなくてよい、祐との関係だったのだ。
一つ嘘をついてしまうと、それをかばうようにして、次々と嘘をつかなければいけなくなる。
学校からわたしたちのマンションまで帰る約20分間。
わたしは祐の前なのに素直なわたしでいられなかった。
何個嘘をついてしまったか考えると、自己嫌悪の沼に溺れてしまいそうだ。
言おうと思っていた自分の気持ちも、言えなかった。言えるわけがなかった。
急にその気持ちに自信がなくなってしまったのだ。
祐のお母さんが作ってくれた中華料理も、全然美味しく感じられなかった。
一昨日まで当たり前だったことが、静止画になって、色褪せて、ぺりぺりと剥がれていく。
ーーああ、もうだめだ、崩れてしまったんだ。