この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
余熱
第1章 崩れる

「おーい、起きろー葉月ー、おーい」

優しくて柔らかい、聞き慣れた声。

ゆっくり目を明けると、心配そうな祐の顔と、湿布や消毒薬の匂い。

「お〜よかった。おはよう。もう下校時間だから帰ろ。」

祐のほろほろと綻ぶ顔を見て、わたしの心もほどけていく。

やっと、わたしの中で猛威をふるっていた嵐がおさまった。

「祐…」

名前を呼ぶだけで心があたたかくなる。

「ん?どうした?」

「…さみしかった。」

自然に名前を呼び、自然出てきた言葉だった。

「…ごめんな。腹減っただろ。帰って飯食お。」

飯…?

そういえばさっき、下校時間って…

急いで時計を見ると、時計の針は6という数字を指していた。

「えぇっ!?もうこんな時間!?」

ベッドから飛び起きて、急いで支度をする。

「ははっ、3時間目からずっと寝てたんだってな、葉月にしては珍しいな。」

帰路につき、祐との他愛もない会話に心が満たされていく。

「徹夜して、気持ち悪くて朝ご飯食べなかったら、体育の準備運動の時点で倒れちゃったらしい。」

「徹夜?なんでまたそんな珍しいこと。」

「なんで…?そ、それは…」

あ…言えない…

「あの…えっと…体調…悪くて」

「昨日も!?大丈夫かよー… 昨日の夕飯はちゃんと食ったの?」

「うん、コンビニのサンドウィッチ…」

それからの会話はあまり覚えていない。

ーー祐に言えないことができた。

頭の中にあることが素直に言葉にならないのは初めてだった。

心から心配してくれる祐に対して、それをあしらうようにして、本当のことを言うのをやめてしまったーー。

その罪悪感に苛まれ、昨日熱くて苦しかったところが疼いた。

/132ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ