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余熱
第11章 横切る

――ジリリリ…
午前六時半、いつも通り、頭上の目覚まし時計が鳴り出す。
いつも通り、まるで接着剤で貼り付けられてしまったみたいに瞼を開けられないまま、
布団に包まったまま、腕を少し伸ばして目覚まし時計を止めた。
そして、いつも通り、起き上がろうとしたのだが、
ずん、と腰を鈍い痛みが襲い、そこからじわ、と甘ったるい倦怠が広がった。
太腿の間には湿り気も感じた。
一瞬、生理かと思った。
しかし、布団の上でそっと静かに眠っていた置手紙に気付き、
甘くて濃密な記憶が、脳内を、体中を、駆け巡る。
瞼の接着剤なんて、あっという間に取れた。
"しばらく会いづらくなります。
私が昨日教えたこと、自分でやってみてください。"
細長くて、端正な字。
すぐに先生の字だと分かった。
"しばらく会いづらくなります"
隙間風のような寂しさが、心を横切る。
"昨日教えたこと"
先生の指示、わたしの手を操る左手、
不意に先生の指が秘所を掠めたあの瞬間――。
その記憶は、ただ思い描くだけで、閉ざされた肉のあわいを、とろり、と濡らした。

