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余熱
第11章 横切る

ベッドに横たわりながら、スマホを手に取り、SNSに目を通す。

その後、いつも最後に行き着くのは着信履歴だった。

そして、躊躇しつつも緑色の発信ボタンを指先でタッチしてしまった。

スマホは耳元には当てず、発信中という文字が表示されている画面をぼやけた視界で捉えていた。

先生は電話に出なかった。

わたしはベッドから身を起こし、脱がされた服を着て、ふらりと外へ出た。

先生がわたしをさらいに来てくれた時の記憶を辿り、

彷徨うようにまだ騒がしい夜の街へと足を運んだ。

自分が今していることがどれだけ軽率なことか、いまいち見当がつかない。

頭の中が水浸しになってふやけて、

理性を働かせる器官が壊れてしまっているみたいだった。

わたしはいつからこんなにだらしのない女になってしまったんだろう。

交差点で、夜の街に浮かぶ赤信号を眺めながら、

けじめをつけなければいけないその時は、

もうすぐそこまで迫ってきている。

そんな予感だけは、なんとなく察知できていた。

それが、なけなしの理性だった。

すると突然、突風のような胸騒ぎがしたかと思ったその瞬間、

目の前の景色がふっとスローモーションになる。


ゆっくりと横切る、

見覚えのある黒い車、


そしてその窓に映し出されたのは、


ハンドルを握る先生と、


助手席に乗る下川先生だった。


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