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余熱
第1章 崩れる
「ねぇ、ずっと聞きたかったんだけどさ、」
高校に入って出会い仲良くなった沙月が、わたしの方にぐいっと近づき、声をひそめ、尋ねる。
「葉月と村田くんって
…付き合ってんの?」
「えぇっ!?」
驚きのあまり、大声をあげてしまう。
友達とお弁当を食べながら談笑したり、
スマホをいじったり、
思い思いに昼休みを過ごしていた教室中の視線が、一斉にわたしに向けられる。
わたしはきまりが悪くなって、沙月を教室の外へ連れ出した。
「なになに、動揺しすぎでしょ。やっぱりそうなんだ〜。」
にまーっと笑う沙月。
「違うよ、付き合ってなんかないよ、ただの幼馴染みだってば。」
「は?幼馴染み?
いや、だからって普通あんな親しい?」
村田くんこと村田祐は、物心ついた頃からわたしの側にいた。
親が共働きで忙しく、マンションの隣の部屋に住む村田家にお世話になっているうちに、祐がいつも側にいることが当たり前になっていった。
保育園から現在通っている高校に至るまで、ずっと離れたことはない。
そしてこれから先、きっと大学も一緒のところに行って、同じところに勤め、やがて結婚し、子どもを授かり、一生一緒に過ごすのだろう…。
そう思えるくらい、祐とはどれだけ一緒にいても飽きることはなく、心地良い時間が流れ、飾らない自分でいられる。
そんな人は祐だけだったし、これからも祐だけである気がしていた。
祐に恋愛感情を抱いた覚えはないが、祐以外の人と恋愛関係になることなんて全く想像できないし、そういうものはそのうち少しずつ芽生えてくるものなのかもしれないと思っていた。