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余熱
第3章 重なる

あの後、授業をしに行った教室に入ってすぐ、窓側に、少女を見つけた。

――俺の受け持つ生徒かよ…。

なんとか鎮めたはずの動揺が、また微かに動き出す。

軽く自己紹介をし、授業を始めようと黒板に向かおうとした時、彼女と視線がぶつかった。


大きな瞳が、瞬きをするのも忘れ、こちらを見つめている。

その瞳の中に、まるで絵筆の先から滴った絵の具が水に一滴落ちるように、じわっと色が浮かんだ。

その色は、明度も彩度も落ちていない、絵の具から出したままの色ではあるが、

確かに、十三年前、先輩の目に宿った色と同じ、緋色だった。

少女は彼女の身に起こった異変に、ひどく動揺しているようだった。

どうも、自ら緋色の絵の具を垂らしたわけではなさそうなのだ。


――ああ、きっと、彼女は何も知らないのだ。


突如己に宿った緋色の熱の正体も、それをどのように扱えばよいのかも――。


お前にその熱を与えたのは俺だと、その熱は体が俺を欲しているからだと教え、

何も知らないその白くて華奢な体に、快楽を擦り込ませたい――。


そしてその快楽は俺とでしか味わえないと思わせ、依存させたい――。


そんな狂おしいまでの支配欲のようなものが、ぐつぐつと湧いてきた。

授業中だというのに、下腹部は内側からぎりっと張り詰め出し、痛かった。
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