この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
余熱
第4章 滲みる
あれから、火傷したように熱くて痛くて苦しかった心臓は、祐の優しさに消毒されているみたいだった。
熱や痛みが収まっていく反面、その度ひりひりと滲みるものがあった。
でも癒されているのは確かだから、塾へ行って先生に会って、傷口に塩を塗るようなことはしたくなかった。
だから、その週の金曜日も、次の週の月曜日も、塾には行かなかった。行けなかった。
二回休んだら補習を受けなければいけなくなり、先生から電話もかかってくる。
その方が耐えられないと思い、月曜日は塾の目の前まで行ったが、引き返してきてしまった。
その夜21時を少し過ぎたあたり、いじっていたスマホが揺れて、鳴る。
登録していない番号だった。
「…はい、もしもし」
「森さん?」
左耳に響いた甘い声に、呼吸が出来なくなる。
「…っ…高田…先生…ですか…?」
やっとのことで絞り出した声で、言葉をつなぐ。
すると、ふっ、と電話越しに笑われた。
耳元がくすぐったい。
体が、心臓が、みるみるうちに、また熱くなっていく。