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余熱
第4章 滲みる

あれから、火傷したように熱くて痛くて苦しかった心臓は、祐の優しさに消毒されているみたいだった。

熱や痛みが収まっていく反面、その度ひりひりと滲みるものがあった。

でも癒されているのは確かだから、塾へ行って先生に会って、傷口に塩を塗るようなことはしたくなかった。

だから、その週の金曜日も、次の週の月曜日も、塾には行かなかった。行けなかった。

二回休んだら補習を受けなければいけなくなり、先生から電話もかかってくる。

その方が耐えられないと思い、月曜日は塾の目の前まで行ったが、引き返してきてしまった。


その夜21時を少し過ぎたあたり、いじっていたスマホが揺れて、鳴る。

登録していない番号だった。

「…はい、もしもし」


「森さん?」


左耳に響いた甘い声に、呼吸が出来なくなる。

「…っ…高田…先生…ですか…?」

やっとのことで絞り出した声で、言葉をつなぐ。

すると、ふっ、と電話越しに笑われた。

耳元がくすぐったい。

体が、心臓が、みるみるうちに、また熱くなっていく。

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