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余熱
第4章 滲みる
「…名前、覚えてくれてたんだ」
さらに甘さを増す電話越しの声。
「…っ…補習なら受けます、すみませんでした」
たじろぎながら返すと、また微かに笑う声が聞こえた。
なんだか耳に息を吹きかけられているみたいで、その度どきっとする。
「男と電話するの、初めて?」
「えっ…な…何で…」
「電話、耳からちょっと離してるでしょ?
声が聞き取りにくいから…
…耳元で男の声するの、くすぐったい?」
まるで歌うような、奏でるような口調で、今の自分の状態を言い当てられる。
何も言い返すことが出来ない。
「…当たり?」
そう尋ねられても黙っていた。
そしてまた、ふっと息が吹きかけられたかと思うと、
「……可愛い」
先ほどよりもいくらか低い声で、こう囁かれた、そんな気がした。