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余熱
第6章 嵌まる
事後の処理をしてから、葉月の目元を隠していたネクタイをほどいてやった。
「…あれっ…先生…?」
ーーやはり、そうだったか。
想像していた通りの反応だが、いざされると胸がきりりと軋む。
やはり、彼女は先程までの行為の相手を、“祐”だと思っていたのだ。
そうでなければ、あの声を上げてはくれないだろう。
それを俺は、てっきり俺に感じてその声で喘いでくれているものだと思い込んでいたのだ。
「……おはよ」
振り絞って何とか出た声は掠れ、震えているのが自分でも分かった。
それに情けない顔してるんだろうな、今の俺。
頬が重たくて、うまく笑えない。
それをごまかすように、彼女を抱き寄せるどころか、俺の方が縋り付くように抱きしめた。
「先生…」
そう呼びかける彼女の声に、わずかではあるがあの可憐さが残っていた。
また欲望を擽られる。
また唇を重ねてしまう。
彼女を、俺のことしか考えられないようにしてやるーー。
そう意気込んでいた自分が既に懐かしい。
嵌らせるつもりが、逆に嵌ってしまったのは、俺の方だった。