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余熱
第8章 欲する

「…葉月、


俺の彼女になって?」


唇を奪われ、

甘く、上ずって掠れた声でこう告げられ、

思わず小さく頷いてしまえば、

もう一度、今度はやや激しく口づけをされた。


頭がぼうっとするほどキスを交わして、

身も心も、その先を受け入れる準備が整ったと思った時、


「…俺ん家行こ。」


体温がぐっと上昇する。


祐は、自分の家だと歯止めがきかなくなる、と言った。


だから、祐の家に場所を移すということは、キスの先をするということ――。


そういうことだと覚悟して、ついてきた。


それなのに。


あれから祐がしたこといえば、

今バンドで練習している曲の話、

それから好きなバンドの新しいアルバムの話、

あと、うまく作れるようになったからと言って、夕食に親子丼を振舞ってくれたこと…。


キスの先はおろか、キスすらしてくれなかった。
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