この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
余熱
第8章 欲する

祐の家から帰宅して二時間近くが経ち、時刻は22時を過ぎようとしていた。
わたしはベッドに寝転がり、体に残った疼痛を持て余していた。
一度、そういう気分になったら、すぐに収まるものではない。
“俺ん家行こ”
そういう気分になって、そう言ってくれたんじゃないの?
先生は…
息を継ぐ間も与えないようなキスをしてすぐに、
目の前に火花が散るような刺激をくれたのに…。
――ああ、だめだ、
すぐに先生のことを連想してしまう。
先生から与えられた何もかもが、わたしの限界を超えていた。
自分の中の新たな基準のようなものとなってしまうほどに、
わたしの脳も体も、先生のすべてを鮮明に覚えている。
――こんなの、絶対普通じゃない。
でも、“普通”って何?
キスの後、何事もなかったかのように振る舞うのが、果たして“普通”なんだろうか。
祐に、先生以上のことをされたら、今度はそれが“基準”になるのだろうか。
分からない。
先生との一夜が、わたしにとってあまりにも“普通”じゃなさすぎて、
恋愛経験の始まりがあまりにも“普通”じゃなさすぎて、
“普通”が分からない。

