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余熱
第8章 欲する

祐の家から帰宅して二時間近くが経ち、時刻は22時を過ぎようとしていた。

わたしはベッドに寝転がり、体に残った疼痛を持て余していた。


一度、そういう気分になったら、すぐに収まるものではない。


“俺ん家行こ”


そういう気分になって、そう言ってくれたんじゃないの?


先生は…

息を継ぐ間も与えないようなキスをしてすぐに、

目の前に火花が散るような刺激をくれたのに…。


――ああ、だめだ、

すぐに先生のことを連想してしまう。


先生から与えられた何もかもが、わたしの限界を超えていた。


自分の中の新たな基準のようなものとなってしまうほどに、

わたしの脳も体も、先生のすべてを鮮明に覚えている。


――こんなの、絶対普通じゃない。


でも、“普通”って何?

キスの後、何事もなかったかのように振る舞うのが、果たして“普通”なんだろうか。

祐に、先生以上のことをされたら、今度はそれが“基準”になるのだろうか。


分からない。


先生との一夜が、わたしにとってあまりにも“普通”じゃなさすぎて、

恋愛経験の始まりがあまりにも“普通”じゃなさすぎて、

“普通”が分からない。
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