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余熱
第8章 欲する
先生の上ずった声に、胸が今にも張り裂けてしまいそうだった。
「…キス、したい?」
そう尋ねられても、ただただ涙を零すことしかできないでいるわたしに、
「俺は、したいよ。」
また、同じ言い方。
一度問いかけてから、自分の願望を言って、狼狽えさせ…。
…こんなの、ずるい。
本当はわたしの心の中なんて、手に取るように分かってるんでしょう?
「…し、たい、です…っ」
わたしは、途切れ途切れに懇願した。させられた。
そうするとゆっくりと先生の薄い唇が近付き、そっと触れるだけのキスが与えられた。
…これだけ?
そう思っていると、
「…こんなのだけじゃ、まだ足りないんでしょ?」
そう問いかけられ、車に押し倒されるような格好にさせられる。
「俺は、足りないよ。」
ーーまただ。
もう完全に先生の思うつぼだ。
ゆっくりと濃密なキスを何度もされ、頭がぼうっとする。
「…このまま、連れて帰ってもいい?」
再び耳へと注がれる問いかけは、どこか遠くから聞こえるような気がした。
何も意味のあることが考えられずに、
ただただ、頷くことしかできない。
ただただ、欲しいと願うことしかできないーー。

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