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HOTEL・LOVE
第14章 そして2人は・・ひとつになった

晴樹のグラスにワインを注ぎ、それから

自分のグラスにも注いだところでボトルはカラになった。

お腹いっぱい食べて、

すこし胃袋を落ち着かせないと立ち上がれないね、と

最後の一杯を前に香澄は晴樹に語りかけた。



「ねぇ・・杉山さんも・・

 おうちに不満ってあったりするの?

 たとえば奥さん、とか」


「え~?なに、急に」



顔は笑っているけど、心の中は

ザワザワとした風が吹き荒れた。

その質問に真面目に答えたら・・

晴樹の中で、その先に待っているものが

ぼんやりとした形を成してきた。


まずいよ・・でも・・正直に答えたい・・


「・・そりゃあるよ。少なからずってくらいだけど。

 そういう笹木さんは?」



ワイングラスに落としていた視線を、ゆっくりと上げて

香澄の眼に焦点を合わせた。

正直に答えてみてくれよ、と念を送りながら。



「あるよ、もちろん。

 小さな不満・・家の中のあっちこっちに転がってる・・」



晴樹から目を逸らし、店の中のそこここに視線を飛ばす。

少しの憤り、少しのやましさ、

それを見透かされないようにするためだった。


そんな香澄の気持ちには気づかずに、

晴樹はこの日まで心の中で温めてきた、

自分なりの気持ちを話し始めた。

正直な気持ちを。
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