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HOTEL・LOVE
第10章 震える目撃
後ろから背中をさすられた。
優しく滑るように、
その手が背中を往復する。
「この部屋、私一人でやるよ。
今隣りの部屋も出たみたいだから。
嫌でしょう?
知り合いの使ったとこ、掃除するの」
「・・すみません。
じゃあ隣りの部屋、やります・・
ホントにごめん・・」
顔をあげないまま
部屋を出ていく男の後姿が
こんなにも悲しげに見えるなんて・・
布団カバーから漂う香水の香りが、
なんだか憎らしく思えて仕方なかった。
仕事を終え、階段を降りながら
香澄は晴樹に
一緒に駅まで帰ろうと言った。
晴樹は黙って頷いた。
その後は一言も話さないまま
階段を下り続けた。
乾いた足音だけが、
うっすらと聞こえるだけだった。