この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater8.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
悪戯な思春期
第1章 テレビの向こうの王子様
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
雑誌でみた瑠衣の私服を着ていた。
似合いすぎてて癪に触る。
「天草……俺、さ」
(私が欲しいんでしょう?)
『次の曲はCRAZEだ! 悶え死ねよお前たち!』
心臓の高鳴り。
バイオリンが響く野外の歓喜の中、私は西の言葉に釘付けだった。
西は瑠衣スマイルをして言った。
「瑠衣になりたいんだ」
CRAZEはフィナーレを迎え、周りの人々が次々に消えていく。
(あぁ……もうハロウィンは終わり)
西は私の手をとってステージに向かい歩き出した。
「天草は俺のだよ」
「……ご主人様」
「うっわああああああ!」
私は超絶マッハの勢いで飛び起きた。
まだ唇にはさっきの言葉の余韻が残っている。
頬がカァッと熱くなる。
(ごしゅ……ご主人って)
瑠衣にならともかく、相手はクラスメートの西だ。
自己嫌悪と快感に挟まれて、暫く思考停止状態に陥る。
「ピンポーン」
今日は土曜日だ。
土曜日のはずだ。
急いで寝巻きを着替え、髪を肩のあたりでカールさせると、玄関にダッシュした。
「はい、おはようございまー……」
「やぁ、天草。私服可愛いね」
「マジか」
そこにいたのは西雅樹だった。
(なんで! なんで? なんで……)
内側で悲鳴上げまくる私だが、表面は冷静そのものだった。
「何の用?」
西はチェックの上着と白のTシャツとデニムという格好だった。
オーダーメイドかと疑うくらい、彼の体の線が浮き上がっていた。
鎖骨が瑠衣にそっくりだ。慌てて目を逸らす。
「デートしようぜ」
桜吹雪が空を舞う。
燕は隣のアパートに巣作り真っ最中だ。
(なんつっ……た)
俺様男子。
決して流行らないこの言葉は需要の低さを示している。
滅多にいないのだから。
草食系が占める現代で。
「デート」
(そんな綺麗な顔で……顔……瑠衣に似ている……ああああ)
「急に言わ……れても」
「電車で軽井沢行こう」
まるでプランは出来ていて、お前の返事一つで決まるのだというこの態度。
余裕綽々だ。
![](/image/skin/separater8.gif)
![](/image/skin/separater8.gif)