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悪戯な思春期
第1章 テレビの向こうの王子様

 格好良いの定義を述べよ。

 彫りが深い。声が心地よい低音。
 スタイルが良い。スラッとしてる。
 金髪だろうが黒髪だろうが似合う。
 ピアスが映える顔立ち。
 お洒落な服に負けない輝き。

 そんな人、いる?
 私は探してきた。
 否、そういう人だけ見てきた。
 どういうことか。
 つまり、理想の男性のファンでありつづけたのだ。何人かいる。
 八年前から大ヒット曲を生み出してきた"瑠衣"は、長い銀髪を編み込んだ斬新なルックスの持ち主だ。

 彼との関係が一番長い。サングラスマニアで1ヶ月は同じものが被ることがない。
 当然私はサングラスを買い込むこととなった。彼のライブには七回行った。
 関東北部に住む自分にとって、東京ライブは近しいものなのだ。ギターもピアノもバスも興味は無い。彼だけを愛してる。

 勘違いしないでほしい。
 私は一般人だ。
 十七歳の今を生きる女子高生だ。
 瑠衣と目が合うことすら適わない。
 適わないんだ。
 CDをいくら集めたところで、触れられるのは声だけ。悔しいけど、それが現実。
 勘違いしないでほしい。
 これは、何の変哲もない女子高生が大スターを手に入れる壮大なラブストーリーなんかではない。
 寧ろ目も当てられない小さな私という個人の人生記録だ、と言えよう。

 天草椎名。それが私の名前。
 中学生の時にパソコンの某動画サイトにて、初めてPVと言われるものに心奪われた一人の少女。
 韓流ブームが来ようが、洋楽ロックに入り浸っていた私が、初めて生まれた祖国のスターに恋をした。
 先に告白しておくと、瑠衣はいわゆるV系だ。銀髪の時点で感づいていたとは思うけれど。
 女性が喜びそうな同性との騒動が多く、友人に堂々と彼のファンだとは言い辛い。
 ただし、その名声は確かなもので、誰もが彼を画面で見るたび「瑠衣だ」と呟く。一流スターだ。
 最も、彼は百九十の身長をお持ちだから、否が応でも目立つのも事実。
 格好良いでしょう?

 前置きはこの辺にしよう。
 瑠衣でも私にでも興味を持った方だけ進んで欲しい。
 私は瑠衣を愛してる。
 そんな生活が永久に続いて良かった。
 願わくば、瑠衣の側にたどり着きたい。
 そんな適わない夢を抱く思春期だった。
 生活が一変したのは。
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