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悪戯な思春期
第3章 王子様の刺客は忍者

「本当に大丈夫だから」
 私はそう言って会長を無理やり帰す。
 まだ何か言いたげだったが、奈々宮は無言で頷いて教室を出て行った。
(今奈々宮が思ってること「俺じゃ頼りにならんのか?」)
(うるさい、しね)
(だから自分に対してさー……)
 ぼんやり自分の独り言に耳を傾け、机にもたれかかる。
 まだ体は火照ったままで、集中力というものを私に与えてくれはしない。
(かと言って……あのままやってたら)
 先ほどの行為を思い出し脳が沸騰する。
(処女……危機)
(あほな題名)
「椎ちゃん?」
 悶々としていたときに突然声が降ってきて当惑しながら身を起こす。
「寝てたかと……」
 声をかけといて驚いているのは魅美だ。
 黒髪ストレートの彼女は、普段以上に内気さ全開だ。
「あの……数学の」
「あ!」
 そこで私は借りっぱなしのノートを思い出す。
 急いで鞄を漁り、綺麗なピンクのノートを見つける。
「ごっめん……ありがとね」
 魅美は両手で受け取り、ニコリと笑った。その純粋な笑顔にどぎまぎしてしまう。
「どういたしまして」
 黒髪を靡かせながら席に戻る彼女は、訳もなく人間離れしているように見えた。

 数学の準備をしていると、後ろから肩をたたかれる。
 雅樹なら振り向かない、と決心したとき甘い声が耳をかすめた。
「モンブランプリンセスはどこで逢い引きしてたのかなぁ?」
「……美伊奈」
 ニヤニヤする美伊奈に呆れる。
 その机の上には食べ終え片づけられたケーキの箱。
 プラスチックのフォークをくるくる回し、美伊奈は返事を促す。
「逢い……逢い引きなんか」
 するとフォークの刃先を目の前に突きつけられる。
 咄嗟に顔を避けるが、冷静に見ると随分遠くにあった。
 刺す気はさらさらないのだ。
 そんな私の反応を楽しみながら美伊奈は追求してくる。
「とぼけちゃダメよん。瓜宮情報だと二人が屋上に登るところ見られてたみたいよ?」
(あの足音は瓜宮だったのかよ)
 瓜宮千夏。
 忍者の末裔。
 そう噂されるほど行動が早く、気配が感じられない人物なのだ。
「……で?」
 美伊奈がソワソワしながら訊く。
「で?」
 尋ね返すと鼻を摘まれた。
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