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悪戯な思春期
第3章 王子様の刺客は忍者
混乱と怒りとはじらいと…あと、何?
「だったら一言いえばいいじゃない! こここんなの……っ変態」
こういう時にちゃんと言葉が出てこない自分が嫌いだ
瓜宮は無表情で私に耳を傾けていたが、最後のワードに反応した。
「……変態? 変な態度のやつ?」
初めてそれを知ったみたいな顔をする彼に、私はすっかり気が抜けてしまった。
そして鏡をもう一度見る。
(いくらなんでも付けすぎでしょ雅樹)
(キスマークだぁ!)
(純情ぶんな!)
(だって初めて見たんだもん)
(これブラウス着てても見える……)
「天草さん」
(こうやって……ボタンを全部閉じて)
(いや、隠せないでしょう)
「天草さん」
「うわ! 何?」
ブラウスを引っ張ってなんとか首元を隠そうと必死で、瓜宮の存在を忘れていた。
(ちょっ……ブラジャー見えてる見えてる!!)
(うっさいな! 隠してるって)
顎をかきながら、瓜宮は言いづらそうにしている。
「なに?」
「いや、その……多分隠せないよそれ。だから、これでもカムフラージュに」
取り出したのはペラペラした白い布。
受け取ってみると冷たい。
「……階段で首打ちつけましたとか、さ」
「……誰が信じんのよ」
それでも鏡を見ながら貼ってみる。
綺麗に痕は隠せた。
「冷たっ」
「大丈夫そう?」
瓜宮が心配そうに見ている。
「あ……ありが」
「礼なんて言っちゃダメだよ。僕が君を押し倒したのは事実なんだから」
「やっぱり襲う気あったんじゃん!」
「やっぱり?」
疲れる。
「とにかくありがとう。授業戻らなくちゃ」
「その格好で?」
「だってもう……」
私は見下ろした胸元に気絶しそうになった。首は確かに湿布で塞がれた。
だが、問題はもう一つあったのだ。
私はダラリと開かれたブラウスを押さえて真っ赤になる。
「……あ"んだがボタン千切るがら」
「ごめん。脱がし方わかんなくて」
(これが素ならぶっ飛ばしたい)
「だから……」
そう言うと瓜宮はおもむろに学ランを脱ぎ捨て、カーディガンも脱いだ。
警戒して私は距離をとる。
すると、頭にカーディガンを投げられた。
「食いやしないよ。それ着ればマシだろ?」
少し温かいそれを私はぼーっと眺める。
瓜宮は寒そうにすぐ学ランを羽織った。
「やだ?」