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悪戯な思春期
第3章 王子様の刺客は忍者
瓜宮の背は百七十にかかる程度で雅樹とは比べものにならない。
だからこそ、そんな華奢な体に引きずられているこの状況に耐え難かった。
「瓜っ……宮」
始業のチャイムが鳴り響く。
既に私たちは使われていない旧校舎に来ていた。
課外授業程度でしか生徒が来ないが、今は誰もいないようだ。
古い壁の臭いがツンと鼻を刺激する中、瓜宮は先へ進んでいく。
(ちょっと待った待って待った)
(瓜宮って忍者キャラじゃなかった?)
(今からなにしようとしてんの?)
奥の会議室を開くと、埃が舞う薄暗い空間が現れた。
「……天草さんてさ」
今度は始めから声が低い。
ゆっくり振り返った瓜宮は、嗤っていた。
「馬鹿だよね」
組み伏せられたのが一瞬だったから、何が起きたかわからなかった。
気づけば瓜宮が手足を押さえつけていた。
頭はパニックに陥る。
「ちょ……やだ離せっ」
すると容易く両腕を頭の上で拘束され、シャツに手が伸ばされる。
勢いよく千切られたボタンが飛ぶ。
めくれ上がった胸は多分全て見られているのだろう。
ゾクゾクとした嫌悪感が這い上がる。
「……やっぱり」
瓜宮は悲しげに微笑んで、顔を胸元に沈めてきた。
「ひぁっ……んん」
首筋に唇が触れ、緩い快感が沸き起こる。同時に涙が零れた。
予想外に早く瓜宮は体を起こした。
「痕……」
「え?」
首筋を指の腹でなぞられる。
「こんなに痕残してちゃ、教師も気づく」
解かれた手で襟元を引き寄せる。
バクバクする心臓に負けずに、瓜宮を睨みつけた。
(痕って……まさか)
「……訴えるよ」
かろうじて震える声で言った。
「その痕は僕のじゃないよ?」
瓜宮は立ち上がって、部屋の隅の鏡を示した。見てこいとでも言うように。
私は後ずさり、瓜宮と十分距離をとって鏡に駆け寄った。
そして絶句した。
ボタンのないダラリと垂れたブラウス。その合間から見えるのは数多の赤い点。
顔が熱を帯びる。
白い肌に彫り込まれたようなそれらは、胸元から鎖骨、首筋まで及んでいた。
(ブラウスだって隠せないんじゃ……)
(まさか美伊奈は気づいた?)
(あのまま授業受けてたら……)
グルグル渦巻く焦りの末に、隣に立つ瓜宮の存在を思い出した。
「ようやくわかった?」