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悪戯な思春期
第5章 キャストの揃ったお城

 屋上。
 ここは意味深い場所だ。
 私は一人で頷いてフェンスに向かう。
 校庭ではドッヂボールの三回戦が白熱している。
 ダン。
 ダン。
 ボールと体がぶつかる音。
 ドッヂボールを作った人はドSだと思うのは私だけだろうか。
 人にボールを当てて勝つゲームなんて他にないのに。
 バスケともサッカーとも違う。
 唯一人が的になる競技。
 ならMの私は何故ドッヂに参戦しなかったのか。
 言うまでもなく、バレシズ美伊椎のせいだ。
 あんなもの発足されてバレーに出ない勇者じゃない。
(正直ドッヂ苦手だもんね)
(当てられて快感じゃないの?)
(いくら私でもそこまでMじゃ)
(ないよねー)
(じゃあ訊くな)
 桃水を飲みながら空を眺める。
―天草、一日貸してくれ―
 雅樹が来たら結果を聞かなきゃ。
 なんで会長があんなことを云ったのか。
 奈々宮会長は普段から変なことをするが、今回は格別だ。
(私はモノじゃないっつの)
 ガチャン。
「雅……」
「あれ……? なんでいんの」
 黒髪が揺れる。
 瓜宮。
 相変わらず痣だらけだ。
「あぁ、西と逢い引きか。じゃあ、邪魔者は退散するよ」
 不機嫌そうに扉を閉める瓜宮を呼び止める。
 閉まりかけたドアが止まった。
「何に出るの?」
「……え?」
 ヒョコリと顔を覗かせる。
 忍者と言うより小動物みたいだ。
 顔が緩んでしまう。
「だから、応援に行くからさ」
 無表情の瓜宮の周りに一瞬花が散るのが見えた。
「……バスケ」
 ガチャン。
「バスケ……?」
 嬉しそうな瓜宮の顔が蘇る。
 私は桃水を飲みながら笑みが零れた。
(男子ってあんなに面白かったっけ)
 瑠衣にしか興味が無かったのが懐かしい。
 しかし、バスケは荒れそうだ。
 雅樹に奈々宮会長に瓜宮。
 三人がどんな闘いを魅せるのか。
 わからない。
 ただ、一つわかる。
 雅樹と瓜宮は同じグループだ。
 でも絶対連携プレーは望めない。
 それだけ。

「悪い。遅くなった」
「んーん」
 私は笑顔で出迎える。
 雅樹もそれに口角を上げた。
「ちょうだい」
 片言で囁くと、私の桃水をぐいと飲んだ。
 上下する喉元が妙にやらしい。
「はぁっ……ありがと。残念だけど五分後集合らしい」
「頑張ってね。会長に何言われたか知らないけど」
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