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悪戯な思春期
第5章 キャストの揃ったお城
家に着く。
(なんか、もう疲れた)
テーブルに突っ伏して、冷たい感触を味わう。頬から冷気が波のように駆け上がる。
スカートのチャックを下ろし、座ったまま脱ぐ。
ブラウスもボタンを二つ外して、とても人には見せられない格好で壁にもたれると脚を伸ばした。
膝が引きつる感覚がする。
緩く首を倒すと、ポキッと鳴った。
「ストレッチしなきゃぁ……」
そのまま大きく首を回して、ブラブラと膝もほぐす。
太腿を両手で揉み、筋肉痛が影さえ現れないことを祈る。
二つ折りになるように両手を爪先に近づけていく。
背中と腰に気持ちいい痛みが走る。
深呼吸をして、胎児みたいに床に転がった。
右手が足の間に誘われるようにして伸びる。
「私は軽い女なのかなぁ……」
意味もなく呟き、それがなにに対してなのかぼんやり考える。
雅樹と恋人の癖して会長に呼び捨てを許したことに対してなのか。
はたまた簡単に雅樹を受け入れてしまうことなのか。
―学校でするなんて不埒ー―
その通りなのか。
また大きな溜め息を吐く。
こんな時は瑠衣を聴くのが一番だ。
狂おしい程にキミは美しい、と帯びに書かれたCRAZEのアルバムを取り出す。
コンポにCDを入れて、再生ボタンに指をかけたところで止まる。
(やっぱりツアー映像観よ)
(なんで)
(なんとなく)
(ハイ。一昨年のハロウィンライブで如何でしょう)
私は一昨年のDVDをラックから引き出した。
真っ黒なテレビ画面が突然赤に染まる。
それから光が弱まり、ライトに照らされた瑠衣がマイクを握る指を舐めて微笑んだ。
この辺で既に私は天国が見られそうだが、映像はさらに瑠衣をアップにしていく。
編み込んだ銀髪を揺らしながら、チュッとキスを投げ囁いた。
『逝きたいのは誰?』
知らずに口を押さえてしまう。
背筋にビリビリ衝撃が走る。
ダンッ。
瑠衣が台座から飛び降り、ステージに足を着いた。
同時に目が眩む光が彼に注がれ、画面は真っ白に変わる。
それからメニューに移るのだ。
つまり、まだ本編にも入っていないのに私の心はブロークンハート状態ってわけ。
(わかる?)
(わかるけど鬱陶しい)
ハロウィンライブにカーソルを合わせて、決定ボタンを押した。
『お菓子をくれても、悪戯するけど?』
あの台詞が響く。