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色絵
第9章 猫
絵を眺める。
レッスンの間、純粋に取り組んだ成果。

別に恋の相手を探そうとあの門をくぐったわけではない。

絵を通して先生を知るうちに惹かれてしまったのだ。一線を越えたのも、そう…

思い返してもどこかで間違えたという場面が浮かばなかった。

考えても決められない。
ワタシは絵を片付けて寝室にいった。

意外にその後はすぐに寝つき、主人が帰ったのも知らず朝を迎える。

ピピピ…
体温計が今日から安全なことを知らせる。

その時にはワタシの心は決まっていた。

主人も愚痴を言うこともなく出かけていく。

ワタシはいつものように支度をして、屋敷に向かった。

カラン、カラン…
この鐘もいつもと変わらない。

アトリエからの先生の挨拶も…


「おはようございます。」

着物になってアトリエに入るワタシを先生は笑顔で迎えてくださった。

少し、ホッとした表情にも思えたけど、特に話題にはならなかった。


先生がアトリエを出て行き、すぐに戻ってこられた。

コンコン…
ドアがノックされて開く。先生の後ろに少女がついてきた。


彼女はぺこりと挨拶して、「沙絵と申します。昨日は失礼しました。」

深く頭を下げる。
沙絵さんは、赤い着物を着ていた。
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