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色絵
第3章 デッサン
「僕の勝ちだね。」

「な、何かの競争だったんですか?」

「いえ、別になんとなく。

1週間は見るだけといったけど、ちょうど僕もデッサン始めるから一緒にやってみますか?」

「はい…」

先生は上手にその場の雰囲気を元に戻した。

テーブルに球や円柱、キューブ等の模型が置かれる。

「凄く初歩的なところからで、鉛筆だけで描いてみてくださいね。」

テーブルを少し後ろに置いて先生が後ろに座る。

「先生も同じものを描かれるんですか?」

「いや、僕の対象は別にあるから…
でも奥さんと同じように鉛筆だけで描いて見るよ。」

鉛筆の持ち方から教わる。先生が鉛筆の先を支え、ワタシの指を持って教える。包丁を握るように鉛筆を持つ。

感じていないと言えば嘘になるが、帯や鏡のことを思えば、それほどでもない。

「まずは、輪郭を薄く描いてしまってから、鉛筆で影をつけて行こう。」


しばらくの間静寂が訪れる。先生の鉛筆は細かく動いている音がする。何を描いているんだろう。

「何度も描いていいからね。コツは見ることだよ。光の当たり具合で出来る影の濃さを、自分で何段階かに分けるんだ。同じように鉛筆で濃さを使い分ける。」
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