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【SS】目が覚めたら…?
第8章 【2000拍手突破感謝】Ⅱ.執事の憂鬱
 


「波瑠兄、見てよ。元『風虎』所属って……波瑠兄の『飛龍』が潰したあの評判悪い族じゃないか? そんな族上がりが好感度ランキング上位の芸能人? なにこれ、笑っちゃうね。おかしすぎてお腹が痛いよ」

 ナツの顔はまるで笑っていない。
 

「『風虎』はルールもへったくれもねぇ、「族」というだけがウリのただのクズの集まりだった。そこの役職もねぇただの雑魚が、俺達に喧嘩売ってるのか」


 ……波瑠さん、多分……貴方が勝手に買っているだけだと…。


「本当にね。死にたがりってやだね」


 ……おいおい、殺すつもりかよ。


 物騒なことを呟く兄弟。

 どう見ても、Haruとは相容れぬ仲らしい。


「ライブ潰してぇな……」


 プラチナチケット代10万円は惜しくないらしい。

 波瑠さんの足がカタカタと貧乏揺すり。


「握手会、潰したいね……」


 どうしてもあのひとに触れさせたくないらしい。

 ナツは波瑠さんから貰ったタバコをふかし始めた。

 ナツがタバコを吸うときは、耐久性あるナツの精神がかなり追いつめられ…やばい時が多い。

 いつも穏やかににこにこしているその顔は、だんだんとその表情を凍り付かせて、残虐性を高めている。

 放置すれば、凶悪なゴジラ化してしまう。


 ナツ……せめて、ここが禁煙なのを思い出せ?

 ダブルでの煙は、俺には辛いぞ?


 ファンが何万といる人気のアイドルが、後方に近い席にいるあのひとと接触する可能性も低ければ、限定300名の握手会であのひとと親密になれる可能性だってゼロに等しいと思うのに、ゼロではないところにこの兄弟は懸念しているらしい。


 狼狽。

 焦躁。

 嫉妬。


 思いきりブラックな感情がどろどろ渦巻いている。

 
 過保護と言えばそれまでだが、あのひとに関わると、普段俺が目にしている表の顔を崩すふたりが、面白く思えて仕方が無い。


 あのひとは、自分がそこまで愛されていることを自覚しているのだろうか。世界は自分中心で回っていることを、わかっているのだろうか。

 ……いや、ないだろうな。あのひと、アホだから。


 せいぜい……被害者意識を募らせ、兄弟に振り回される我が身がなんて不幸だと、嘆いていることだろう。


 ……アホだから。




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