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【SS】目が覚めたら…?
第8章 【2000拍手突破感謝】Ⅱ.執事の憂鬱
「爆破予告でも出しちゃう?」
「ナツ、そういう悪戯で、世間様を巻き込んで騒がせては駄目だ。狼少年のように、本当に狼さんが来た時にまともに対処しなくなるぞ?」
波瑠さんは、意外に考えが古風で固い。
「やるのなら、正面からタイマンだ」
ボキボキ、咥えタバコの波瑠さんの指の骨が鳴る。
「波瑠兄、芸能人にお医者さんが喧嘩売ったら駄目だよ? お医者さんは人様を怪我させてはいけません!!」
そして肉弾戦を貫こうとする武闘派波瑠さんをなだめるのは、いつもナツの役目。
この兄弟、互いが互いの暴走を食い止めるためのストッパー的役割だ。
「とにかく、本物のあの気にくわねぇ面を拝みてぇな。張り倒してぇけど」
「そうだね、とりあえず敵の視察をしたいよ。燃やし尽くしたいけど」
「そいつらにはどこに行けば会える?」
「あっちこっちに引っ張りだこだから、捕まえるのが難しいね。明日の本番前、待ち伏せる?」
「本番があるとわかれば、シズが悦んで出かけるだろうが。決着は今日!!」
「だよね。Haruのために綺麗にしているだろうしーちゃんなんて見たくないし、このまましーちゃんを怒らせたままにしたくないし。早くしーちゃんの目を覚まさせなきゃ。じゃあこれから、どこに行く?」
芸能人相手に怯むことなく、愛する女が夢中になっているからと言う理由だけで、作戦を練ろうとする兄弟。
「リハ……とかしてんじゃないですか、東京ドーム公演であれば」
俺の呟きに、ふたりはぴくっと体を震わせて俺を見た。
「とりあえず会いに行きますか、動かないと始まらない。俺も一緒に行きます。……敵情視察に」
「お~。なんだかお前、やけに張り切ってるな」
「珍しいね、頭脳派サクラが自ら動くなんて」
……言わないでおこう。
あのひとが、夢中になっている存在があることに、その相手が顔だけ取り柄のオトコ(しかもこの兄弟よりまるで平凡顔&個性皆無)であることに、
元やんちゃだった俺もまた…もやもやとした胸を抱え、あんなオトコがあのひとの心に占めることを許したくないという気持ちがあることに。
俺も、あのひとを惑わすHaruとかいう奴を、蹴り飛ばしてやりたい。
元副総長としては、それくらいやってみたい。
……当時俺が発した暴力禁止令、無効にして。