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【SS】目が覚めたら…?
第8章 【2000拍手突破感謝】Ⅱ.執事の憂鬱
 


 水道橋――。


 東京ドーム前。

 大勢のガードマンが立ち、厳重な警備がなされている。


 中にSeasonがリハをしているのかどうかもわからないが、俺達とは別の目的でSeasonと接触を図ろうとしているオンナ達が、ガードマンを振り切って中に忍ぼうとして、取り押さえられている。


「馬鹿なオンナ共だ。こういうのは、目立たずにこっそり忍ぶのが定石」

「本当。やっぱりアイドルが馬鹿だからかな、マナーがなってないよね」


 こっそりの割に、佐倉家に乗りつけていた2人乗りのランボルギーニで移動したがった波瑠さんをなだめ(でかいオトコ3人どう乗っていくんだ?)、佐倉家のステップワゴンを俺が運転してここまで連れてきたはいいけれど、この兄弟……黙っているだけでも、遠目でもかなり目立つ。

 Seasonを始めそこいらの芸能人より余程美貌の持ち主だ。

 しかもナツは、半分芸能人みたいなものだ。


 波瑠さんはマントのように長い裾を拡げた黒いコートを着て、そしてナツはあのまま……ウサギの格好で。

 衣装からして目立つのに、その顔立ちやオーラが相乗すれば、そこそこオンナがまとわりつく俺ですら、その足元に及ばぬほどに、このふたりのまぶしさに平伏したくなってくる。


 ごくりと生唾を飲み込んでいるような音が聞こえてきそうな妙な静寂の中、Seasonから乗り換えようとしているハイエナオンナ達の熱視線で、目立ちまくっている事実には、ふたり…まるで気にならないらしい。 


 このふたりこそ、"こそこそ"には縁遠く。


 いつも自信満々に前を向く様は、やはり俺が憧れる波瑠さんの生き方そのもので、そう強く生きられるふたりが羨ましい。


 同時に、ここから先は入れないと線を引かれた感じになって、無性に寂しくなってくる。


「サクラ、気分悪い? 大丈夫? 波瑠兄に診て貰おうか?」

「熱あるわけでもねぇし、脈も正常。体調悪いなら、車で横になってろ? ああ、あそこで冷たい水でも買ってきてやる……」


「大丈夫です。心配ありがとうございます」



 ……そんなふたりが俺に振り返ってくれる現況、俺はとても満足している。
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