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【SS】目が覚めたら…?
第8章 【2000拍手突破感謝】Ⅱ.執事の憂鬱
仮にもSeasonは、凄まじい数のファンを動員する人気アイドル。
それが、1週間前に東京ドーム公演を突然思い立って、さらにはドーム運営側もそれを了承するのは些か無理がありすぎる。
だとすれば、可能性的に――。
「貴方は、Seasonと知り合いですか?」
Seasonが、わざと相楽を排除しているようにとか思えない。
「はい。実は……」
案の定、相楽は困ったように笑って頷く。
「元々は僕が、Haruとしてデビューする予定でした」
俺達は、意外な言葉に目を細める。
相楽は、ミュージシャンを夢見たただアマチュアではないらしい。
「それが突然、事務所に解雇されまして……」
「思い当たる原因は?」
「本来ならSeasonは、僕の趣味でもあり作曲しているボーカロイドの曲と人間の歌声をマッチングさせるのがコンセプトでした。ですが事務所のスポンサーで、それを好ましく思わない者がいたらしく」
「スポンサー……ねぇ」
波瑠さんがタバコをふかす。
「それがヤクザらしいんです。方向転回を強いられ、事務所から提示された曲調が僕は合わず、結果僕は下ろされ、事実上解雇です。そして……これ、聞いて下さい」
相楽が示したのはスマホ。
そこから動画が再生された。
"好き好きっ、好き好きっ、君のHartに ずっぎゅ~んっ"
そんな音楽がサビのように流れ、どこかの部屋らしき中に集まっていた男も女も、皆大笑いして蹲っていた。
「なにこれ……」
ウサギのナツが笑いを堪えて、ふるふる震えている。
「歌というより、この声です。この掠れたような特徴ある声……。聞いたことありませんか?」
相楽の声に、何度もリピートして、"ずっぎゅん"を聞く俺らは、そこで相楽の言いたいことに気づく。
これは……Haruの声とそっくりだ。