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【SS】目が覚めたら…?
第8章 【2000拍手突破感謝】Ⅱ.執事の憂鬱
「どこでこれを?」
波瑠さんの問いに、相楽は薄く笑った。
「所属していた音楽事務所は大手で、毎月膨大な量のデモテープが送られてきます。その中のひとつを聞いて、事務所のスタッフが大笑いしていて……。その時居合わせた僕もそれを聞いて、あまりに面白くて動画で撮っちゃったんです……。まぁ、元気ないときにこれを見て、爆笑しながら気分転換図っていたんですけれどね……」
相楽は眉毛を下げ、スマホをいじりながら続けた。
「ここの封筒……"山田権太"っていう差出人の名前が見えますよね。この中にこの作曲して歌った本人の写真があるんですが……」
動画を早送りすると、下の下……とも言える、お世辞でもいいオトコとは言えない男の写真が出て来た。服をはだけているその肉体は鍛えられているようだが、黒黒とした太い眉毛に小さすぎる目、豚のような鼻に、分厚すぎる大きな唇。
その顔で右斜め45度のカメラ目線は、とにかく異様。
さすがの波瑠さんも絶句し、タバコをぽろりと落とした。
「あ……ここ、波瑠兄ここっ!!」
ナツが一時停止されたその動画を拡大し、権太がアップになる。
迫り来るその顔は……ただひと言。
"えぐい"
そして、
"あっち行け"。
「ここだよ、この分厚い唇の横の三角形のホクロ!! 珍しいこのホクロの位置、波瑠兄っ!!」
「ああ、あの忌まわしい抱き枕にもあったな。あとはこの肩のところのタトゥ。これは風虎の馬鹿連中共が虎だと言い張るネコの柄だ」
……その絵柄は、俺が描いた方がまだマシなものだった。
この権太は……今のHaruのようだ。
俺は静かに言った。
「……整形でもしたのでしょうね」
整形してあんな程度というのも哀れだが。
「だけどその声と歌のセンスは、整形できなかった……と」
波瑠さんが嘲るように口元で笑い、タバコをふかした。