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【SS】目が覚めたら…?
第8章 【2000拍手突破感謝】Ⅱ.執事の憂鬱
「ひっ!!!」
誰から漏れた言葉かはわからない。
残酷なまでに美しい顔は、最早凶器だった。
「ナツ、抑えろ。相手は……」
「大丈夫さ、サクラ。十分抑えている。ちゃんと理性はあるさ、金かけて整形した顔以外をぼこるから。ちゃんと考えてるさ」
ぞくっとするほど冷たすぎる、ナツの美しい顔。
「手足を胴に繋げて、顔と命さえ無事にしておけばいいんだろ?」
その口元が、残虐的に歪んだ笑みを作った。
その服は愛らしいウサギの着ぐるみだというのに、可愛さの欠片もない。
これはもう、殺人ウサギだ。
悲鳴をあげて3人が逃げる。
Haruは腰を抜かしたのか、その場で座り込んだ。
「あわわわわわ……」
「さあ出ようか、Haru。もとい、山田権太。ウサギさんがたっぷりと可愛がってやる。くく……くくくく……」
ナツが動けずにいる権太の襟首を掴んで、床にずるずると引き摺って歩き始めた時、
「そこまで」
波瑠さんの鋭いひと声に、ナツが立ち止まり、ちっと大きな舌打ちの音がした。
ブラックウサギ王子をひと言で抑えられる帝王は、ゆらりと立ち上がり……引き摺られるがままのHaruの元に行く。
そして腕を組んで上から見下ろす。
「どっちがメジャーでビッグな存在なのか、お前達のファン様に決めて貰おうじゃねぇか。音楽家らしく」
突然、そんなことを言い出した波瑠さん。
「予言しておく。明日のライブ、ドームに詰めかけた4万強のファンは、手回しばかりでのしあがったお前達から離れる。だからせいぜい、最後の歌声を披露しておきな。……若造?」
「お、お前は……お前達は……っ、何者だ!?」
Haruが怯えながら言った。
「俺様と、愉快な仲間達だ」
波瑠さんが不遜に言えば、Haruの顔が微妙に歪み、
「去ね」
波瑠さんの威嚇めいたドスの利いた二文字に、Haruは座ったまま、ゴキブリのように忙しく四肢を動かして出て行った。