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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
なんとか連日の凄まじい嵐は止んだものの、まだ危殆の停滞を思わせるような冷風が吹き込む……東京ドーム前――。
格好いいイケメン4人の顔がついたパネルを掲げた、複数の巨大トラックが横付けしているのが、視界の端に見える場所にあたしはいる。
開始時刻1時間前だというのに、ドーム前は夥(おびただ)しい数の若者がごった返していて、この混雑ぶりをカメラに撮ろうとしているマスコミもいる。
ここにいるのはどれほどの数なんだろう。
満員御礼のこのライブに収容される4万以上と数が、どれくらいのものか、貧弱な想像力しか持ち合わせていないあたしには、さっぱりわからない。
ライブというものは、12年前にユリに付き合い何度か出かけたことがある。あの時も季節は冬だった。
ユリが熱狂的にはまって追っかけをしていた、ただのインディーズバンドで、会場はそこそこ名の知れた中堅ライブハウスだったのだけれど、ライブ未経験のあたしは、普通に夜でも寒くないように厚手のセーターを着込んでいって大変な目に合ったのだ。
ファン達の熱気が凄まじく、音楽に合わせて体を動かしていたら、暑くて暑くて仕方が無かった。冷房なんて役に立たない。
ライブ慣れして、薄手の格好をしてきたユリに笑われたものだ。
――こういう場所には、お目当ての相手をオトすくらいの、薄く悩殺的な衣装が定番なんだよ。
だから、当時…ユリに選んで貰って買った衣装。
――絶対これだって!! これを着たら大人の階段上がれるから!!
あたしも最初躊躇するほどのハジメテの大人っぽい服を、やはりいつものように、隣家で女と遊んでいたハル兄に自慢した。
あたしの"ハジメテ"の大人の服、「いいでしょう~」と。