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【SS】目が覚めたら…?
第2章 Ⅰ.ハル兄と……
 
 
「このガキっ!!」


 そして幼子を肩に担いで手を上げた。


「ハル兄!?」


「乳を飲むのは、自分の母さんのだけにしろ!!」

「いやああああああん」

「いやじゃねぇだろ、子供ならなんでも許されると思ってるんじゃねぇぞ、このクソガキ!! 誰がお前みてぇなクソガキにまで、シズの生乳を吸わせるか。シズをイカせられるのは、俺様だぞ」


 方向性が……。



 男の子の尻に連続ぺんぺん。

 まるで鼓のようにぺんぺんぺん。


 ……他人様の子供なのに容赦なく。

 

「母さん以外の乳は吸いません。わかったなら、繰り返せ」

「わかった。おかーたん以外のおっぱいはちゅうちゅうはちまちぇん」

「よし。だったら、お姉さんに謝れ」

「おねーたん。ちゅうちゅうしてごめんなさぃぃぃぃ」


 ……36歳の語る意味を、こんな小さい子がわかるんだ?

 というか、あたし……穴、穴掘って暫く潜っていたいんですけれど。

 
「よくできたな。ちゃんと謝ることが出来た子には、ちゃんといいことがある。お母さんはどこだ?」

「わからないの。あっちでいなくなって。おとーたんも。ぐすん」

「だったらこのおねーたんと、このおにーたんが一緒に探してやる。絶対見つけてやるから、泣くんじゃねぇぞ?」

 
 前屈みになって、ナツにするようにその頭にぽんと手を乗せて、柔らかな髪をまさぐるハル兄の顔は、実に柔らかな笑みが浮かんでいた。

 その笑顔に、きゅんとときめいた。


 この帝王、子供扱いには向いてなさそうで、実はうまいのかもしれない。

 アメとムチの使い方が絶妙だ。


 意外。


 ハル兄は相手が子供だろうと、気が食わねばすべて怒鳴ってねじ伏せるのかと思いきや、きちんとできればちゃんと褒めるし褒美を用意する。

 そこら辺は……無法地帯であるサバンナを統率してきた知恵なのか。


「うん、おっさん」


 元気いっぱいのその返答に、さすがのあたしも顔をひきつらせた。

 だがきっと偉大なるサバンナの帝王は、そんなことでお怒りにはならないはず……。


「誰がヘタレのクソ親父だぁ? 天使が飛んでいるようなすんげぇ高いところまで、"高い高い"してやろうか? あ゛~?」


 前言撤回。

 子供相手に、なんて大人げない。
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