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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
「"好き好きっ、好き好きっ"」
ナツの甘い艶やかな歌声が聞こえてきた。
歌に合わせて、お尻ふりふり、足をぴょこぴょこと動かしているようだ。
ちらりと黒いコードらしきものが見えたから、イヤホンで音楽でも聴いているのだろうか。
「"君のHartに"……」
そしてナツは指を組んだ両手の人差し指と親指だけを伸ばして合わせ、
「"ずっぎゅ~んっ♡"」
そして首を傾げて肩を竦めた。
「………」
「………」
……やばい。
ナッちゃん、やばいって。
可愛い以上に……どうしちゃったのさ!!
そんなにあたし追い出しちゃったのがショックだったの!?
現役モデルがウサギの着ぐるみきて、あの踊りと歌とフリはやばい。
長い足と引き締まったナツの小尻が、着ぐるみだからとはいえ……だぼだぼに膨らんだシルエットを見せる。
足は靴代わりなのか、ウサギの足を模した可愛いもこもこ靴を履いている。大きさはかなり大きい。
そこには、誰もが見惚れるナツのパーツの面影はなにもなく。
ウサギの格好は愛らしいと表現出来ても、していることがいただけない。
どう見てもコミカルな大道芸人……もしくはお笑いだ。
なぜにそんなこと…。
「"君のHartに ずっぎゅ~ん"」
「"僕のHartも ずっきゅ~ん"。ん……」
気に入らないのか、時折頭を掻きながら、何度も繰り返す…歌って踊れる"ずっぎゅん"ウサギ。
ナツ……。
しーちゃん、涙がちょちょぎれるよ……。
努力の子ナツは、どうしてあさっての方向に懸命に努力しちゃうの?
よりによって、なんでそのお歌……?
それ、リピートして踊りを極めたくなる程、いい曲?
「ねぇ、あれ……大学で貴方と卑猥なことしていた"彼"? あれはなんの趣味? 卑猥の他にどんな趣味? あれはちょっと……病院に相談した方がいいかも……。まさかドラッグやっているとか?」
委員長、哀れんだ顔をしながら紡ぐ言葉はストレートで容赦ない。
「ち、違うみたい……。し、知らないひとよ、知らないひと!!」
……ごめんナツ。
ナツの尊厳のために、しーちゃんは他人のフリをするよ。
悪く思わず、そこで心ゆくまで"ずっぎゅん"していてくれ。