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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
なかなか、ずっぎゅんウサギの兄上は見つからない。
委員長のセンサーも、開演間近のこの人だかりの中では、見つけ出すことは出来ないか。
ああ、Seasonになにかしでかす前に、とっ捕まえてやらねば。
「あれ、なんなのかしら……」
突如立ち止まった委員長の指さした先は、ドームの正門と言えるべき、一番人通りが激しい場所。
そこに大勢の警察官が、こちら向きに仁王立ち。
そして"KEEP OUT"と書かれた黄色いテープ。
何事!?
まさかハル兄……殺傷事件でも!?
「ちょ……待ちなさいよっ!!」
委員長放置で慌てて走り出したあたしの前に、突如立ちふさがったのは、ピンク色のウサギ。
……と思ったが、ウサギだと思えるのは、そのピンク色のふさふさな耳だけで、あとは着ぐるみの上に水色の着物を着ている――、
「よぅ、ロリちゃん」
「………」
「ま、まさか俺を忘れたわけじゃ……。出番があまりないとはいえ、あまりに酷いじゃねぇか? 話の日数的にはそんなに経っていない……」
「シャラップよウサギさん!! わけのわからないことを、一体だれに訴えているの? 今は正月過ぎた設定よ?」
「ロ、ロリちゃんこそ、設定ってだれに……」
「シャラップ。か弱い乙女に深いツッコミは卑怯だわ」
呉服屋生まれの着物ウサギ……もとい、ハル兄直下の元特攻隊長の元ピンク頭だったらしい、実苗字「宇佐木」こと、リアルウサギが苦笑する。
「覚えていてくれればいいんだけどよ」
「そりゃあ、あれだけ便秘を騒いでくれれば」
彼の便秘は深刻らしい。
催す前兆があれば、職務放棄してトイレに駆け込み用を足そうとする。それを妨げるものは、怒りの鉄拳で黙らせる。
そんなはちゃめちゃでも、現職警部補という立派な肩書きをもつ、かつて警察泣かせだった、ハル兄とタメの元暴走族。
そんな彼には、バイクや警察手帳よりもトイレが必須だ。
あたしが思うに、1日のうち、半分はトイレにいそうな気がする。
日本の未来を憂いながら、あたしは挨拶した。
「最近、お通じの具合はいかがですか?」
"ご無沙汰です、お元気でしたか?"
「おう、爽快だ、お前も元気そうでなにより」
……ちゃんと真意は通じているらしい。