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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
「この"ウサマジック"のおかげで、朝からピーゴロゴロ、快調だぜ!! 二週間ぶりの大漁だ」
……それは、この寒い中にその格好で立っていたのが祟って、お腹が冷えて下っただけでは?
それでもそんなことを疑うこともせず、親指をびしっと突き立てて、ひどく嬉しそう&幸せそうに、快腸具合を語ってくれれば、
「それはよかったですねぇ」
と笑うしかなく。
「ロリちゃんに見せてやりたかったよ、あの大漁ぶり。便器から溢れるかと思った」
「それは結構なことでなにより」
あたしは無表情で棒読みだ。
この、無駄に気品ある顔立ちをした…和装イケメンの言葉とは思えない。
彼も実に、残念すぎる。
残念ではないイケメンは、此の世には存在しないのだろうか。
そう思っている時、残念イケメンの代表格であるハル兄の名前が出る。
「さすがはハルだな。持つべきものは、親身になってくれる友だ」
「その(奇天烈)ウサギの服、ハル兄の指示なんですか?」
明らかに胡散臭いなにかを感じる。
「ああ。"ウサギと愉快な仲間達"っていう名で、皆で宇佐木呉服店の宣伝をしてくれるらしいんだ。これ制服みたいなものだとさ。リーダーの俺も宣伝してる。
宇佐木にウサギ、すげぇインパクトあるだろう? しかも俺がピンク頭だったからと、わざわざピンクに揃えたらしい。ハルはいい奴だよな。さすがはカリスマ元総長。目立ってナンボのこの世界、これで俺の実家も安泰だ」
鼻高々に、誇らしげにウサギは語る。
あの帝王を大絶賛するけれど。
ねぇ、よく考えて見ようよ。
あの唯我独尊の帝王が、元臣下に主役を譲ると思う?
それに、"ずっきゅん"王子のあの猛稽古が、この"着ぐるみ~ず"の一員としての彼に与えられたミッションならば、呉服屋の宣伝に不必要な稽古をしていたことになる。
あのナツの異常なまでの集中力と熱心さが、そのミッションからの現実逃避とは思えないあたしは、ただ訝しさを募らせるだけ。