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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
「ここだけの話、あいつの案で爆弾予告が入ったように見せかけ、その宣伝場所を確保してんだよ。これ、絶対しーっだからな、ロリちゃんだから言うんだから。ばれたら減給どころの話じゃないからな」
ああ――。
こりゃハル兄に言いように転がされているな、単純ウサギ。
ハル兄は、この場所でなにかをしたいんだ。
この場所、ドームの入り口で。
完全に職権乱用している警部補は、あたしに耳打ちしてこっそり感を打ち出しているけれど、奇抜な格好をしている時点で周囲から奇異の眼差しを向けられ、目立っていることに気づかないのだろうか。
そこまで頭が回らないほど、宇佐木呉服店は存亡の窮地に立たされているのだろうか。
それなら、お着物買ってあげた方がよほど現実的に思うけれど。
「そういやロリちゃん、正月……振り袖着たんだって?」
「へ?」
ウサギが腕組みをしながら、唐突な話題を投げて寄越した。
「あのハルがロリちゃんに着せたいと、かなり昔から、すげぇ高い黒の加賀友禅の振り袖を買ってたんだよ。おおそうだ、弟ちゃんもそれに負けず劣らずかなり前に、反物で真っ赤な着物地を買っていったんだがよ、あいつうちの店に修行しに来て、素人のくせにプロ顔負けに見事に仕立てたんだ。で、ロリちゃんはどっちの振り袖が気に入ったんだ?」
「え、あたしは……」
あたしは今まで着物なんて着たことはない。
着てたのは、あたしの初夢で……。
「ハルは正月、弟ちゃんは2日。立て続けに写メつきのメールが届いて、ふたりともすげぇ惚気てたぞ? そりゃあ宇佐木呉服店の自慢の逸品だから、実物のロリちゃん、写メより数倍増しの美しさだったろうけどよ」
ねぇ、初夢なのに……
どうしてあのふたりが喜んでいるの?
正直、お正月は贅沢にも食べて寝て遊びすぎて、夢なのか現実なのかよくわからない、ぼんやりとした記憶しかない。
――卑猥の神様ぢゃ。
なんか変な声がしてたように思うけれど。