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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
  


「メール……見せて貰えます?」

「なんだロリちゃん、ふたりと撮ってた写メ見せて貰ってねぇの? ほら、これ……あれ? あれ? なんでねぇんだ? あれ?」


 取り出したスマホを操作しながら、ウサギは焦った声を出した。



「ちゃんと俺それを受信して、ロリちゃんの写メをカタログにしようと目論んでいて、後日ハルから縁結びのお守り貰って、今日もハル達と話して……あれ?」


 支離滅裂のようなウサギの呟き。

 結局、ウサギが受信したと言い張るメールはどこにもなかった。


 夢かうつつかわからないお正月――。

 何を決め手に現実とするのかわからないけれど、だけどウサギの帯にひっかけられているお守りが、やけにあたしの記憶を刺激した。

 あれは縁結びではなく、安産のお守りだ。

 ナツと一緒に神主さんに言われたけれど買えなくて、だけどハル兄が家の中に沢山飾って念を込めていたお守りだ。


――アキ、おとーたんは待ってるぞ?


 ねぇ、あれは夢だったっけ?

 それとも現実だったっけ?


――しーちゃん、ピンクのお守り売りきれちゃってる!! フユ~。


 どこまでが夢なのだろう。

 あたしは、本当に目覚めたのだろうか――。



「まあいい、後でゆっくり探すから。けど、俺も見たかったな、ハルが惚気るほどのロリちゃんの生の着物姿」


 ウサギは目を細めた。

 今にも舌舐めずりしそうな面持ちは、弱小動物のものではなく、かつて……サバンナの帝王が食い散らかした残骸を食っていたという、馳走にありつこうとするハイエナのような眼差しで。

 元々優雅で気品あるイケメンの、女を誘惑する意図的な流し目は、アラサーというだけで、対オトコの実経験が追いつかない……まだ初心さが残るあたしの心臓を、どっくんどっくんといわせた。

 これが便秘に悩み、着物姿で肉弾戦を得意とする…やんちゃな経歴を持つ、36歳の現役警官とは信じがたい。

 これなら和装ホストでもいい。

 ……今は、耳付きで体がダボダボしているが。


「なぁ、ロリちゃん……」


 妖しく微笑んでウサギが近づく。
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