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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
そんなあたしを救ったのは――。
「ってぇ、だれだよ、タバコの空き箱に石詰めて投げた奴! 喧嘩ふっかけてきたのはだれだ!?」
バキバキと……不穏に指の骨を鳴らし、肉弾戦を得意とするヤンキー魂に火をつけた、目の色を変えたウサギ姿の元特攻隊長は、「あそこか、うぉりゃあああ」と叫んで、犯人がいると思われる方角に走っていった。
この空き箱……ハル兄の吸ってたピースだ。
「助かったわね。それが飛んでこなきゃ、私があの卑猥ウサギを後ろから殴りつけようと思ってたわ」
それまで黙して傍観していた委員長、学生カバンのような重そうなバックを両手にお持ちだった。
「貴方、卑猥なウサギ菌には汚染されてない? はい、ウェットティッシュで除菌して。この冬は卑猥なウサギが増殖してるみたいね。ウサギが着物きて発情してるなんて悪夢よ」
まるでインフルエンザのように扱われる、ウサギ菌とやら。一応、あたしは手を拭き拭き。
ホラーやファンタジー的に、ウサギの着ぐるみが増殖しているわけではないだろうけれど、行くところ出くわす怪しげなウサギもどきは、変態さんに突然変異する未知なる菌の影響下にあるらしい(しかも除菌可)。
卑猥や変態をウサギ姿で見せつけてはいないのに、委員長が卑猥と思えるということは、彼女は本能でそうした輩を見分けられるのだろう。
そうか、警部補も卑猥仲間だったか。
まあ残念なイケメンだからね……。
「あ、そろそろ時間。中にいきましょう、タカシくんが中で待ってるかもしれないわ」
ハル兄を探さないとと思うのに、委員長はあたしの腕を掴んで走る。
細腕のくせに凄い力だ。
そしてあたしは引き摺られて、ドームの中に入ったのだった。
とりあえずは、警察を動員させて保守させたあのスペースでなにかをする気らしいことはわかった。
それがドームの外で、あのウサギ以外に真っ当な警察官がいる以上、大事には至らない……よね?
ハル兄、静かにしてて。
ウサギ共を抑えていてよ。
Haruになにかしたら、あたし許さないんだから!!
そして、ハル兄達の企みが一体何かわからぬまま、運命の開演のベルが鳴ったのだった――。